先日の講座ではSTさんと私ともう一人講座を受けている方3人でグループになり、
入れ替わりで失語症者役をして実践的なことをしました。
失語症者の方が伝えたい物を推測する
失語症者が何か伝えたい物を考えてそれを支援者が質問して何か当てるということをしました。
- 支援者役:「それは、触れるものですか?」
- 失語症役:頷く
- 支援者:「それは建物の中にあるものですか?」
- 失語症者:うーん。首を傾げる。
- 支援者:「大きいものですか?小さいものですか」
- 失語症者:手で大きいジェスチャーをする。
- 支援者:「それは動物ですか?」
- 失語症者:首を振る
- 支援者「物か」
- 「それは乗り物ですか?」
- 失語症者:頷いて、スイングするジェスチャーをする
- 支援者:「ブランコですか?」
- 失語症者:「はい」
このようにして答えに辿りつくことが出来ました。
「それは建物の中にあるものですか?」と聞いて首を傾げたのは、中にもある場合があるし、外にもあるしということで、悩んでのことでした。
こういう〇でも×でもない答えの時、失語症者の方は困るのでしょうね。
今回はスイングするジェスチャーや私人でなく、もう一人の方もいたので答えに辿りつけましたが、
本来は失語症の方はジェスチャーは上手ではないそうです。
間違った答えを言ってしまうこともあります。
そして、ご本人は支援者の表情を見ているそうです。
なので、なかなか答えが出ないとき、支援者は表情に気を付けないといけないそうです。
失語症の方は相手の表情を見て、「自分の伝え方が悪いせいでがっかりさせてるな」、とか、「困らせてるな」とか思って、もう止めたいと思ってしまうそうです。
私は特に良くも悪くも顔に出やすいタイプなので、注意が必要です。
失語症者へ情報を伝える
次の情報を失語症のある人に伝えるという実践でした。
失語症者役は言語聴覚士さん(以後、STさんと記載させていただきます。)が担当しました。
- バス旅行は10月31日、月曜日
- 参加者は失語がある人12人、家族の人6名
私たち支援者が3名の計21名です。 - 待ち合わせ時間は、午前9時に文化センターの前に集まってください。
- マリンワールドに行って、昼の食事はお魚市場で食べます。
刺身定食、焼き魚定食、日替わり定食があります。
私と、もう一人の参加された方で、悩みながら伝えました。
まず、必ず伝えたいことを優先して伝えました。
何についての情報であるか、日時、待ち合わせ場所、待ち合わせの時間です。
水族館へ行くバス旅行の話であることを伝えました。
バスの絵を描いて、何人が並んでバスの前にいて、中に座る様子を書きました。一人の人に失語症役のSTさんの名前を書きました。
魚の絵を描きました。バスが魚に向かうように矢印を書いたり、「旅行」「水族館」と漢字で書いたりすると、STさんが頷いてくれました。
日時、待ち合わせ時間については
兄が日付を伝えるとき、カレンダーを書いたり使っていたことを思い出し、
紙にカレンダーを書いて日付、曜日を記しました。
時間は9時を示す時計の絵を描きました。
STさんが伝わった様子をしてくれました。
文化センターの伝え方が難しかったです。文化センターと書いて今回は分かってもらいましたが、
本番は地図や写真で伝えるのがいいのかな、と思いました。
失語症のある方は
次の能力は病前と同じに保たれています。
- 知的機能
- 状況の判断
- 社会的礼節、適切な感情表現
- 時間、場所、出来事の記憶
よって、
物事を判断する能力に障害はありません。
言語を操る機能に障害があるために物事の理解が困難であるのです。
認知症などのように判断する能力が十分でない場合とは異なります。
支援者の十分なわかりやすい説明があればほぼ自身で判断が可能です。
30年超されているという言語聴覚士(ST)さんとお話して
情報伝達の時間の後、STさんから、「お兄ちゃんに鍛えられているだけあるね。なかなかこうはいかないよ。」と褒めていただきました。
兄とのやり取りした時間を思い出し、気付かなかったけど、いつの間にか兄に鍛えられていたのでしょうか素直に嬉しかったです。
失語症の方が伝えようとしていることを、大きなカテゴリーから○×で答えられる質問をしていき、徐々に細かいカテゴリーにして答えを導くのですが、
身内ならまだしも、支援者になるということは他人である失語症の方と関わることになります。
全然答えを出せず、相手の方を困らせたり、がっかりさせたりするのではないかと不安になってきました。とSTさんに話したら、
「分かってあげられないこともあるよ。ごめんねー、分からないって。
でもね、伝わった時、分かった時の喜びは大きいんだよ。」と言われました。
兄とのやり取りの中で、私がだんだん答えに近づいていって、兄の分かってもらえるかもという時の表情や、伝わった時の、兄の安堵したような、嬉しいような表情、そして私も嬉しかったことを思い出しました。
この喜びが、支援者の方のやりがいになっているのでしょうね。
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