先日お客さまが兄に会いに来られました。
兄が勤める会社でお世話になっているお二方が兄に会いに来てくださいました。
失語症の兄なので会話はどうなるのか心配でしたが、
お客さまが発症前の兄の仕事への取組みの様子をお話された後に、「お兄ちゃん、めいっぱい頑張ってたんだね。」と言って兄の顔を見ると、涙を浮かべていました。
自分から話すことはまだ出来ないものの、しっかりお相手の話を理解して聞いているのだと思いました。
また別のお客さまが会社の様子をお話してくださった時も、少し難しい内容でお話のスピードも普通の速さでしたので、兄が着いて来ているか心配でしたが、その話を聞いているときの兄の表情は、発症前のときの兄の顔になっていました。
まるで脳出血をしたことが嘘のような、失語症なんて無いかのようにお話を頷いて聞き入っていました。
日頃から兄のことを気にかけてくださる多くの方々には本人を含め家族一同大変感謝しております。
この場を借りてお礼申し上げます。
テレビの内容の理解
とある番組でアイドルの女の子が今の自分の流行りについて話していました。
兄が首を傾げて意味が分からない様子でしたので、説明しました。
「今はみんなマスクしているから、マスクの中の口がどんな形をしているか当ててもらうゲームしているんだって。
相手と同時にマスクを取って同じ口の形をしていたら、ハイタッチして喜ぶんだって。」
「あ~。」と私が説明すると理解したようでした。
「先日来られた会社の方のお話の方が難しかったと思うんだけど、あの時は分かったんだよね?」と改めて聞くと、
「分かったの。」と答えました。
自分に馴染みのある内容だと難しい内容であっても、簡単な馴染みのない話よりも理解しやすいのか、
直接顔を合わせて話した方が理解しやすいのだろうか。。。
でも、直接顔を合わせて話していたから理解出来たという理屈だとしたら、ビデオ通話で仕事の話を聞く時も理解出来ないということになると思うのですが、ビデオ通話でも仕事の内容は理解出来ているんです。
失語症って本当に不思議です。
平仮名の理解について
毎日平仮名の50音表を何度も何度も繰り返し読み上げています。
「あいうえお、かきくけこ~」スラスラと歌のように読み上げます。
しかし、1文字指して改めて何か聞くと、答えられたり答えられなかったりです。
そこで、反対の「ん」から読み上げてもらうようにしてみました。
途端に言えなくなり止まってしまいます。
「あいうえお、かきくけこ~」は、歌のように記憶されており、記憶されている脳の場所が右脳になるのでしょうか。(兄は左脳からの出血です。)
「か」が言えないので、
紙に「かさ」と書いてこれは?と聞くと「かさ」と読みました。
「き」が言えないので、
紙に「きつつき」と書いてこれは?と聞くと「きつつき」と読みました。
意味のある単語になると読めるけど、平仮名一文字だと読めなくなるようです。
何よりもスムーズに挨拶を言えるようになりたい
状況に応じた挨拶をスムーズに言うことが出来なくなっています。
挨拶が分からないと悩んでいるので「ありがとう」や「おはよう」などの挨拶の表を作成しました。
兄は覚えようとその表を見て読むのですが、平仮名で書いた挨拶の文字をなかなか読むことができません。
平仮名一文字は読めないけど、意味のある単語にすると読める。
しかし、挨拶の言葉になると読めなくなってしまうのです。
これがまた不思議です。
読むことは出来なくても、自然に状況にあった挨拶が口から出てくる時もあります。
リハビリの日記
毎日リハビリの一つとして、日にち、行った場所、食べたもの、家族の名前などを箇条書きにして書いています。
失語症の方のお話を伺う機会があったのですが、日記で「が、は、を、へ、に」などの助詞を日記をつけることで覚えたとおっしゃる方が複数いらっしゃいました。
そこで、日記を箇条書きではなく、少し文章にしたらどうかと思い、
日記を記入する際に母が付き添って教えながら簡単な一文を書いてみたそうなのですが、母が教えても上手く行かず、兄は「分からんのよ。」と辛い表情をしたそうです。
下肢のリハビリ、上肢のリハビリでは辛い表情を見ることは全くなく、ストイックに頑張る兄なのですが、言語のリハビリはストイックな兄にも辛い表情にさせるものがあるようです。
そういう時は、言語は少しずつしか進めないけど、間違いなく三カ月前、半年前、一年前と比べて前進しているのだから大丈夫と声を掛けています。
前進は確実にしています。
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