失語症の兄が今想っていること

兄は今失語症で自由に話すことが出来ません。

脳出血発症から1年7ヵ月になろうとしている今、兄が何を考えて何を想っているのか推測は出来ても全部聞き出すことは出来ていません。

LINEビデオで話していると、何かを私が聞くと、顔を傾け斜め上を見て言葉を出そうとしますが、しばらくして「ん~、分からんなあ。」と言います。

「それは、話したいことがあるけど、言葉が出て来ないということ?」と聞くとそうだと頷きます。

たくさんの感情や考えを言葉に出来ず胸に秘めているのでしょう。

兄は発症前、私に仕事の話はしたがりませんでした。名刺を見てもカタカナばかりで、何をしているのか聞いても、お前には分からんと話してくれませんでした。

説明が面倒くさかったのでしょう。

でも、同じ会社に勤める弟のことは気にかけており弟の状況など聞かせてくれてました。

兄の長男が幼かったときに兄がこぼしていた想い

兄は発症前のコロナ禍で自宅でのリモートワークの日々を過ごしていました。

子供も学校が休校になり家族が家にいました。

受験を控えた息子がいました。

そのような状況での兄と息子との状況は想像に易いでしょう。

兄が実家に戻って来ていた昨年10月。脳出血を発症して1年4ヵ月

兄が仕事でお世話になっていた方々が会いに訪れてくださいました。

その時に伺った兄の仕事の様子です。

その方は兄がある都市へ出張した際に一緒にお仕事をしていただいていた方です。

兄が倒れ入院していた時コロナ禍で見舞いもままならない時期に、その方も兄と交流のある方々の写真を勇気づけるため送ってくださっていました。

兄は出張が多く、出張の際は現地の支社の方と仕事終わりにお酒を飲み親交を深めていたそうです。

その際、兄は長男の名前を何度も何度も言って「○○ちゃんが可愛いんです。早く帰って○○ちゃんに会いたい」とよくこぼしていたんだそうです。

お話をしていただいた方はあまり名前を覚える方ではないそうなのですが、兄の長男の名前はよく覚えているのだそうです。

それだけ兄の口から出てきていたのでしょう。出張の際にも子供のことが頭から離れないほど可愛かったのです。

兄は本社勤めでしたが、現場の仕事も理解していたそうです。現場の仕事も分かっているから現地の方も兄とは働きやすかったとおっしゃっていました。

兄は仕事熱心で完璧を求めるタイプだったのでしょう。

出張先でお世話になっていた方と
よくお仕事でご一緒させていただいた方と

携帯カバーから出てきた娘からの手紙

兄が実家に帰って来ていた同じく昨年10月のことです。

兄と母と私で気分転換にモーニングを食べに喫茶店へ出かけました。

私は兄と向かい合わせに席につき、「誰々さんは何をされている方なんだよね。」なんて話をしていたら、携帯カバーのポケットから名刺などを出して見せてくれました。

色々と見ていると、小さく畳んだお手紙が沢山出てきました。

広げてみると、それは長女がまだ幼稚園か、幼稚園にも入る前の頃に書いたパパである兄へのラブレターでした。

あまりの可愛さに、私が可愛い可愛いと、一人で写メを撮ったりはしゃいでいて、ふっと顔を上げると、前に座っていた兄が少し遠いところを見て目に涙を浮かべていました。

涙がこぼれるのをこらえていましたが、しばらくすると、目に溜まった涙が一粒こぼれ落ちてしまいました。

私は気づかなかったふりをして、手紙を畳み兄の携帯カバーへ戻しました。

このとき、言葉に出来ない分、沢山の感情があふれ出てしまったのだと思います。

兄の携帯カバーにはまだ沢山お手紙が入っていました。

お手紙とは言えないような紙の切れ端に書いたようなものまで取ってありました。

いつか聞きたい兄の今の想い

兄は今、私が体験したことのないことを体験し、経験して、色々な思いを胸に溜め込んでいると思います。その感情は苦しいこと辛いことばかりかもしれませんが、そんな中にも嬉しいことや、感動したこと、こうなって初めて気付けたことなど沢山のことを学び感じているのだろうと思います。

その思いを今は私や家族、兄の子供たちに伝えることが出来ません。

でも、いつか失語症が良くなって、話せたり、文字に想いを書けたり出来るようになったら、たくさんこの時の話を聞きたいと思います。そして、このブログに兄自身に綴ってもらえる日が来ればいいなと思っています。

LINEビデオ通話で話すとき、また実家に戻ったら特訓しようねと言っています。

パソコンの練習や、右腕のリハビリ、一人で買い物をしてみたり。今はけがをしないよう散歩を頑張って続けてねと伝えると、少しにっこりと笑顔を作ってくれました。

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コメント

  1. こんばんは。
    娘さんの手紙を見て想いから涙が溢れるというのを読ませていただき想像してしまいもらい泣き。
    自分の想いを言葉に表せない辛さ 本人でないのでなんとも辛さがわかりませんよね。
    また、その状況を間近で見ていたお母様と妹さんも辛かったですね。

    我が失語症夫は麻痺が強いので右の味覚がありません。新しく鍼灸へ通いたいと思っており、そこは構音障害にも積極的に取り組んでいて手足はもちろんリハビリと鍼を融合してすすめるようです
    先生曰く 今は若い方の脳卒中が多いとおしゃってました。新しい鍼灸院へ通う事になり何か変化があれば良いと感じています。
    お互い頑張りましょうね〜

    • JUNKOさん、こんばんは。
      想いを言葉に表せない辛さは計り知れないですね。私だったら塞ぎ込んでしまうと思います。
      そんな中に分かろうと辛抱強く明るく接してくれる家族なり友人なりがいることは救いでしょうね。
      ご主人、右の味覚が無いんですね。舌を誤って噛んでしまうこともあるのでしょうか。すごく違和感がありそうですね。
      新しい鍼灸院、良さそうですね(*^-^*)
      構音障害に積極的に取り組む鍼灸院があるんですね!!
      なぜ今若い方の脳卒中が多くなっているのでしょうね。兄が倒れたすぐ後に若いブレイクしたばかりの俳優さんも脳出血されて今テレビで見かけることが無くなりました。
      ご主人によい変化がありますように、また教えてください(^^)/

      • たびたびすみません。舌を噛んでしまう事も食事をこぼしてしまう事もありません。ただ少しですが、よだれが🤤右から出ることがまだありますので本人が気をつけています。😅
        尿閉鎖障害でも山元式新頭鍼療法にお世話になりました。今回は同じ山元式を取り入れている鍼灸院ですが構音障害にも力を入れている様なのでお世話になろうと思います。(階段の上り下りがスムーズにいけばです)また、治療を続ける様でしたら担当医の意見書があれば保険適応にもなる様です。

        実は尿閉鎖の際の鍼治療でも構音障害に良い刺激がありました。ですので今回の新しく見つけた治療院ではマッサージや発音を促すリハビリもしてくださる様で期待しています。ただ治療を受ける本人の気持ちも大事だそうです。素直に治療に取り組んでくれればと願うばかりです。

        • そうなんですね。舌を噛んだりすることが無くて良かったです(*^-^*)
          山元式新頭鍼療法、初めて聞きました。早速ネットで調べてみました。
          構音障害に良い刺激があったんですね!
          新しいところは、マッサージもしてもらえるとのこと、心強いですね☆
          良くなる期待が出来るのであれば、是非前向きに取り組んでいただきたいですね♪(*’▽’)
          またお話をお聞かせください(*’▽’)

  2. はじめまして…
    59歳の主人が脳出血右片麻痺になり、昨年の5月19日に仕事中の現場先で倒れ、11月29日に退院致しました。
    YouTubeでお兄さんの事を知り、お兄さんの歩行リハビリを主人に見せ、主人も退院後、お兄さんに励まされ、毎日リハビリ頑張っています。
    コロナの中、病院での面会ができず、1ヶ月に一回あるかないかの面談で、主人の様子も全くわからず、退院後に、高次機能障害がこんなにたくさんあるんだとわかり、私自身も潰れそうになるくらい精神的に落ち込みました。
    もちろん一番辛かったのは主人自身だとわかっています。
    だけど私自身が、不安との戦いに限界を感じる時があり、どうしようなく押し潰され、これから先の不安なことばかり考えてしまい…
    私がしっかりしないといけないのですが…

    でも、お兄さんの歩行動画に主人も、励まされ、頑張ろうと思っている姿が段々あらわれてきました。

    いつも動画あげていただきありがとうございます。

    主人は、毎日階段の歩行練習を私と一緒にしています。

    はじめて知った脳出血後遺症、本当にその通りだと思いました。

    周りには、中々わかってもらえず、孤独との戦いです。

    笑顔を忘れず頑張って行きたいと思っています。

    妹さん、いつも動画ありがとうございます。

    長々メールしてしまい申し訳ありません。

    • さおりさん、コメントありがとうございます(*^-^*)
      ご主人は兄の1ヵ月前だったのですね。
      コロナ禍での入院はご家族もご本人もとても焦りを感じますし、とても孤独で不安ですよね。
      私も出来るなら何度も面会に行って、元気づけたりマッサージしたり話しかけて刺激を与えたかったです。
      急性期の対応でその後変わってくることを調べて知っていたので、気持ちが焦るばかりでした。
      さおりさんの不安で押し潰れそうな気持は、また私の立場とは違うから尚更大きいことと思います。

      でも、さおりさんは押し潰されず、背を向けず、毎日ご主人の歩行練習に寄り添っておられるんですね!
      きっと頑張った分だけ結果は変わって来る思います。
      ご主人は頑張っている姿を近くでさおりさんに見て貰えて励みになっているでしょうね。
      奥さまが近くで見てくれているのと、一人での練習とは全然違いますよ。
      経験した人にしか分からないことを兄はもちろん兄を見ている私も学ばせてもらっています。
      兄の動画が少しでも励みになれていることを嬉しく思います(*’▽’)
      お互い頑張りましょう♪

  3. お返事ありがとうございます。

    妹さんのお優しいお言葉に涙が出ました。

    お兄さんの動画で、字の練習をしているのを見て、主人も毎日、算数のドリル、字の練習をしています。

    私達家族は、奈良の大仏さんの近くに住んでいます。

    いつか、お兄さんみたいに、奈良公園を散歩できるように、毎日歩行リハビリ頑張っています。

    マンションがエレベーターないので、毎日階段歩行練習もしています。

    妹さんとお兄さんの動画、私達夫婦にとって、本当に励みになり、主人も頑張ろうって気持ちになり、私も勉強させていただいています。

    本当にありがとうございます。

    • そうなんですね(*^-^*)
      奈良大仏さんのお近くなんですね。
      パワー貰えそうないいところですね☆
      私の方こそ、私たちの動画見て頑張ろうと思っていただけてるなんて、とても嬉しいです。!(^^)!
      毎日算数のドリルに字の練習、頑張ってますね!(^^)!
      こちらも励みになりました。
      よーし、今年も兄に頑張ってもらって動画アップにブログ更新していきますね!!

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